レーザ溶接の回帰分析

モデルの構築について

主に、 1. レーザービーム径 2. 溶接速度 3. レーザー出力 4. 溶接母材の板厚

を説明変数、「溶接溶け込みの深さ」を目的変数、実際の加工結果を学習データにして、ディープラーニングによる回帰分析を実行できるプログラムを作成したい。

import numpy as np
import pandas as pd
import tensorflow as tf
from tensorflow import keras
from tensorflow.keras import layers
from sklearn.model_selection import train_test_split
from sklearn.preprocessing import StandardScaler

# 学習データを読み込む
data = pd.read_csv("your_data.csv")

# 説明変数と目的変数に分割
X = data[['レーザービーム径', '溶接速度', 'レーザー出力', '溶接母材の板厚']]
y = data['溶接溶け込みの深さ']

# データを訓練データとテストデータに分割
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(X, y, test_size=0.2, random_state=42)

# データの正規化
scaler = StandardScaler()
X_train = scaler.fit_transform(X_train)
X_test = scaler.transform(X_test)

# ニューラルネットワークモデルを構築
model = keras.Sequential([
    layers.Dense(64, activation='relu', input_shape=[4]),
    layers.Dense(64, activation='relu'),
    layers.Dense(1)
])

# モデルのコンパイル
model.compile(loss='mean_squared_error', optimizer=tf.keras.optimizers.Adam(0.001))

# モデルの訓練
history = model.fit(X_train, y_train, epochs=100, validation_split=0.2)

# モデルの評価
model.evaluate(X_test, y_test)

CSVファイルの構造は、以下のようにヘッダーラベルを含む形式であることが望ましいです。

レーザービーム径,溶接速度,レーザー出力,溶接母材の板厚,溶接溶け込みの深さ
3.5,150,1000,2.0,3.2
4.0,160,1100,2.5,3.7
3.8,140,1050,2.2,3.4
...

レイヤー構造を説明

このディープラーニングモデルでは、Kerasを使用して3層の全結合ニューラルネットワーク(fully connected neural network, または密結合ニューラルネットワーク)を構築しています。全結合ニューラルネットワークは、各層のすべてのニューロンが前後の層のすべてのニューロンと結合しているタイプのニューラルネットワークです。

以下が、このモデルのレイヤー構造です:

  1. 入力層(Input Layer):入力層は4つのニューロンを持っており、4つの説明変数(レーザービーム径、溶接速度、レーザー出力、溶接母材の板厚)を受け取ります。この層は、input_shape=[4]として定義されています。
  2. 隠れ層(Hidden Layer)1:64個のニューロンを持つ全結合層です。活性化関数としてReLU(Rectified Linear Unit)を使用しています。ReLUは、入力が0以下の場合は0、それ以外の場合は入力をそのまま出力する関数です。この層は、layers.Dense(64, activation='relu')として定義されています。
  3. 隠れ層(Hidden Layer)2:64個のニューロンを持つ全結合層です。活性化関数としてReLUを使用しています。この層は、layers.Dense(64, activation='relu')として定義されています。
  4. 出力層(Output Layer):1つのニューロンを持つ全結合層です。この層は、目的変数である「溶接溶け込みの深さ」を予測するための出力を生成します。活性化関数は使用されていません。この層は、layers.Dense(1)として定義されています。

モデルは、損失関数として平均二乗誤差(Mean Squared Error)を使用し、最適化アルゴリズムとしてAdamを使用してコンパイルされています。学習の際には、エポック数(学習を何回繰り返すか)を100回とし、バリデーションデータを用いてモデルの性能を評価しています。このモデルの構造は、問題によって調整が必要な場合があります。隠れ層の数やニューロンの数を増やす、活性化関数を変更する、最適化アルゴリズムや学習率を調整するなど、さまざまな方法でモデルの構造を調整できます。これらの調整は、問題の複雑さやデータセットのサイズ、モデルの性能に影響を与えるため、最適な構造を見つけるために試行錯誤が必要です。

以下に、モデルの構造や学習プロセスを調整するいくつかの方法を示します:

  • 隠れ層の数やニューロンの数を増減することで、モデルの表現力や学習能力を調整できます。ただし、過学習や学習時間の増加に注意してください。
  • 活性化関数を変更することで、モデルの非線形性を調整できます。一般的な活性化関数には、ReLU、sigmoid、tanhなどがあります。
  • 最適化アルゴリズムを変更することで、学習プロセスの効率や安定性を向上させることができます。一般的な最適化アルゴリズムには、Adam、RMSprop、SGDなどがあります。
  • 学習率を調整することで、学習プロセスの速さや収束性能を向上させることができます。学習率が高すぎると収束しない場合がありますが、低すぎると学習が遅くなります。
  • エポック数やバッチサイズを調整することで、モデルの学習プロセスを制御できます。適切なエポック数やバッチサイズを選択することで、過学習を防ぎつつ効率的な学習が可能になります。
  • 正則化手法(L1正則化、L2正則化ドロップアウトなど)を導入することで、モデルの過学習を抑制できます。これらの手法は、モデルの複雑さを制限し、汎化性能を向上させることができます。

これらの調整を行い、問題に最適なモデル構造を見つけることが重要です。また、ハイパーパラメータチューニングのためのツール(GridSearchCV、RandomizedSearchCV、Optunaなど)を使用することで、最適なハイパーパラメータを自動的に見つけることができます。これらのツールは、与えられたハイパーパラメータの範囲内で最適な組み合わせを探索し、最も良い性能を示すモデルの構造や学習プロセスを自動的に選択します。

例えば、Optunaを使用してハイパーパラメータチューニングを行うには、以下のような手順で実装できます。

まず、Optunaをインストールします。

pip install optuna

次に、チューニングを行うための目的関数(objective function)を定義します。この関数は、モデルを構築し、与えられたハイパーパラメータで学習を行い、性能を評価します。

import optuna

def objective(trial):
    # ハイパーパラメータの候補を設定
    num_hidden_layers = trial.suggest_int("num_hidden_layers", 1, 3)
    num_units = trial.suggest_int("num_units", 32, 128)
    activation = trial.suggest_categorical("activation", ["relu", "sigmoid", "tanh"])
    optimizer = trial.suggest_categorical("optimizer", ["adam", "rmsprop", "sgd"])
    learning_rate = trial.suggest_float("learning_rate", 1e-5, 1e-2, log=True)

    # モデルの構築と学習
    model = build_model(num_hidden_layers, num_units, activation, optimizer, learning_rate)
    history = model.fit(X_train, y_train, epochs=100, validation_split=0.2, verbose=0)

    # モデルの性能を評価
    loss = model.evaluate(X_test, y_test, verbose=0)

    return loss

# モデル構築用関数
def build_model(num_hidden_layers, num_units, activation, optimizer, learning_rate):
    model = keras.Sequential()
    model.add(layers.Dense(num_units, activation=activation, input_shape=[4]))

    for _ in range(num_hidden_layers - 1):
        model.add(layers.Dense(num_units, activation=activation))

    model.add(layers.Dense(1))

    model.compile(loss="mean_squared_error", optimizer=optimizer(lr=learning_rate))

    return model

最後に、Optunaを用いてハイパーパラメータチューニングを実行します。

study = optuna.create_study(direction="minimize")
study.optimize(objective, n_trials=50)

best_params = study.best_params
print("Best parameters: ", best_params)

この例では、隠れ層の数、ニューロンの数、活性化関数、最適化アルゴリズム、学習率といったハイパーパラメータをチューニングしています。Optunaは、50回の試行(n_trials=50)で最適なハイパーパラメータの組み合わせを見つけることを試みます。チューニングが完了すると、最適なハイパーパラメータの組み合わせがbest_paramsに格納されます。これらのハイパーパラメータを用いて最終的なモデルを構築・学習させることで、性能が向上することが期待されます。

# 最適なハイパーパラメータでモデルを構築・学習
best_model = build_model(best_params["num_hidden_layers"], best_params["num_units"], best_params["activation"], best_params["optimizer"], best_params["learning_rate"])
best_history = best_model.fit(X_train, y_train, epochs=100, validation_split=0.2)

最適なハイパーパラメータを使ってモデルを構築し、学習データでモデルを学習させます。その後、テストデータや新しいデータを使ってモデルの性能を評価することができます。ハイパーパラメータチューニングにより、モデルの性能を向上させることが可能です。ただし、チューニングには時間がかかることがあり、効果には限りがあるため、データの前処理や特徴量エンジニアリング、さまざまなモデルやアンサンブル手法の試行など、他の手法と組み合わせて性能向上を目指すことが重要です。

このレイヤー構造を、人間が認知できる形で表現する

構造を視覚化する方法の一つは、グラフィカルな図を作成することです。各層をノード(円や四角形などの図形)で表現し、ノード間の接続を線で示すことで、モデルの構造をわかりやすく表現できます。以下は、本題で説明した3層の全結合ニューラルネットワークを図で表現した例です。

Input Layer (4 neurons)       Hidden Layer 1 (64 neurons)       Hidden Layer 2 (64 neurons)       Output Layer (1 neuron)
    [●]                              [●] [●] ... [●]                 [●] [●] ... [●]                         [●]
    [●]                              [●] [●] ... [●]                 [●] [●] ... [●]                          
    [●]                              [●] [●] ... [●]                 [●] [●] ... [●]                          
    [●]                              [●] [●] ... [●]                 [●] [●] ... [●]                          

Kerasを使用している場合、summary()関数を使ってモデルのレイヤー構造をテキスト形式で簡単に表示することができます。

model.summary()

また、Kerasにはplot_model関数があります。これを使用すると、モデルの構造を画像ファイルとして保存することができます。plot_model関数を使用するには、pydotとgraphvizをインストールする必要があります。

pip install pydot graphviz

インストールが完了したら、plot_model関数を使ってモデルの構造を画像として保存できます。

from tensorflow.keras.utils import plot_model

plot_model(model, to_file='model.png', show_shapes=True, show_layer_names=True)

これにより、model.pngという名前の画像ファイルが生成され、モデルのレイヤー構造が視覚化されます。show_shapesパラメータをTrueに設定すると、各層の入力および出力の形状が表示され、show_layer_namesパラメータをTrueに設定すると、各層の名前が表示されます。

適切な学習データ量

適切な学習データ量は、問題の複雑さやモデルの構造に依存します。一般的には、データ量が多いほどモデルはより正確に学習し、未知のデータに対する予測性能が向上します。ただし、データ量が増えると学習にかかる時間も増加し、過学習のリスクが高まることがあります。

今回のモデルは、4つの入力特徴量から1つの連続値(溶接溶け込みの深さ)を予測する回帰問題に対して、3層の全結合ニューラルネットワークを使用しています。このような比較的シンプルなモデルでは、数百から数千のデータポイントがあれば十分な学習が可能であることが一般的です。ただし、問題の複雑さやデータの品質によっては、それ以上のデータが必要になることもあります。

適切なデータ量を見積もる方法の一つは、学習曲線(learning curve)をプロットすることです。学習曲線は、異なるデータ量でモデルを学習させ、それぞれのデータ量での訓練誤差と検証誤差をプロットしたものです。学習曲線を観察することで、現在のデータ量が適切かどうかを判断できます。

学習曲線の特徴:

  1. 訓練誤差と検証誤差が共に高い場合、モデルは未学習(underfitting)であり、より複雑なモデルを試すか、特徴量エンジニアリングを検討する必要があります。
  2. 訓練誤差が低く、検証誤差が高い場合、モデルは過学習(overfitting)しています。正則化を導入するか、データ量を増やすことで過学習を抑制できます。
  3. 検証誤差がある程度減少した後、一定の範囲で変化しなくなる場合、現在のデータ量が適切であることを示しています。さらなるデータ量の追加は、性能向上に寄与しにくくなります。ただし、検証誤差がまだ許容範囲内でない場合は、モデル構造や特徴量の改善を検討する必要があります。

学習曲線をプロットする方法の一例を以下に示します。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from sklearn.model_selection import train_test_split

def plot_learning_curve(model, X, y):
    train_errors, val_errors = [], []
    X_train, X_val, y_train, y_val = train_test_split(X, y, test_size=0.2)

    for m in range(1, len(X_train)):
        model.fit(X_train[:m], y_train[:m], epochs=1, verbose=0)
        y_train_predict = model.predict(X_train[:m])
        y_val_predict = model.predict(X_val)
        train_errors.append(mean_squared_error(y_train[:m], y_train_predict))
        val_errors.append(mean_squared_error(y_val, y_val_predict))

    plt.plot(np.sqrt(train_errors), "r-+", linewidth=2, label="Training set")
    plt.plot(np.sqrt(val_errors), "b-", linewidth=3, label="Validation set")
    plt.xlabel("Training set size")
    plt.ylabel("RMSE")
    plt.legend()
    plt.show()

plot_learning_curve(model, X, y)

この関数は、訓練データのサイズを徐々に増やしながら、訓練誤差と検証誤差を計算してプロットします。グラフから適切なデータ量を判断することができます。

最終的に、適切なデータ量は問題やモデルの性質に依存するため、実際にデータを用いて学習曲線をプロットし、検証誤差が許容範囲内に収まるまでデータ量を増やすことが望ましいです。また、データ量の増加に伴い、過学習を抑制するために正則化やハイパーパラメータチューニングも検討してください。